加筆修正をして、追記に仕舞いました。
カラン、コロン。
兄弟ふたり祭り囃子の喧騒の中並んで歩いて、こんなに下駄の音ばかり耳に響くはずはないのに、そればかりが気になる。
隣を歩くアルフォンスに話しかけてもいいものか躊躇われて、口を開いては何も言わずに閉じている。何度か繰り返すうちに、そんな自分が何かに似ているとおぼろげに思っていれば、金魚すくいの屋台を見かけて得心した。
毎年二人で競うアレの、景品にそっくり。
「兄さん、金魚すくいだ。」
「おう」
今年は負けねぇぞ、と続ける前に、弟は下駄の音をさせて嬉しそうに駆け寄っていった。
「懐かしいねぇ。やってみようっと」
なんて、言いながら。
カラコロカラララ。
下駄の音に置いて行かれて、オレは急いで後姿を追いかける。浴衣の背中はずいぶんと大きく感じるのに、行き交う人影に視界を塞がれると妙に焦る。
金魚すくいが懐かしい、とアルフォンスは言った。
そんな些細な事に心揺さぶられるのはどうしてだろうか。
金魚すくい一回100円!と、よく通る声のオヤジが鉄串が刺されたモナカを差し出す視界の下方で、ゆらゆらと水面下を漂う金魚たちが人影に怯えて散っていく。狭い水槽に逃げ場は無く、赤や黒の斑点となって角に密集した。
往生した金魚は、それでもあちらこちらと動きまわり続けている。
先にモナカを受け取りしゃがみ込んでいたアルフォンスの膝下が、浴衣の合わせ目から覗いていた。筋の浮くそれから視線を外し、弟の手元を見ていると、袂が捲られて二の腕が顕になった。
「兄さん、ちょっとココ折ってくれる?」
「ほい」
今日の気温は何度だったか。
浴衣の下に隠されていた熱気が指先に触れ、外気に散っていく。
「ありがと。じゃ、競争ね兄さん。負けた方が氷オゴリで!」
「負けても泣くなよ?」
軽口を叩いてしばらく一緒に水面を睨む。
「あ、」
なんていう声にそちらを見やれば、薄黄色の金魚がアルの手元に漂っていた。アルフォンスの髪のような、穏やかな金色にも見える。
「兄さんみたい」
笑いを含むアルフォンスの言葉と共に、そのモナカが水を掻く。器に落とされた金色は、弟の手の中でくるくると舞った。
それからも見事に掬い取られていく金魚に見惚れて、いつの間にか水に突っ込んだままだったオレのモナカは、水槽の中でぐずぐずとふやけてしまっていた。
兄弟ふたり祭り囃子の喧騒の中並んで歩いて、こんなに下駄の音ばかり耳に響くはずはないのに、そればかりが気になる。
隣を歩くアルフォンスに話しかけてもいいものか躊躇われて、口を開いては何も言わずに閉じている。何度か繰り返すうちに、そんな自分が何かに似ているとおぼろげに思っていれば、金魚すくいの屋台を見かけて得心した。
毎年二人で競うアレの、景品にそっくり。
「兄さん、金魚すくいだ。」
「おう」
今年は負けねぇぞ、と続ける前に、弟は下駄の音をさせて嬉しそうに駆け寄っていった。
「懐かしいねぇ。やってみようっと」
なんて、言いながら。
カラコロカラララ。
下駄の音に置いて行かれて、オレは急いで後姿を追いかける。浴衣の背中はずいぶんと大きく感じるのに、行き交う人影に視界を塞がれると妙に焦る。
金魚すくいが懐かしい、とアルフォンスは言った。
そんな些細な事に心揺さぶられるのはどうしてだろうか。
金魚すくい一回100円!と、よく通る声のオヤジが鉄串が刺されたモナカを差し出す視界の下方で、ゆらゆらと水面下を漂う金魚たちが人影に怯えて散っていく。狭い水槽に逃げ場は無く、赤や黒の斑点となって角に密集した。
往生した金魚は、それでもあちらこちらと動きまわり続けている。
先にモナカを受け取りしゃがみ込んでいたアルフォンスの膝下が、浴衣の合わせ目から覗いていた。筋の浮くそれから視線を外し、弟の手元を見ていると、袂が捲られて二の腕が顕になった。
「兄さん、ちょっとココ折ってくれる?」
「ほい」
今日の気温は何度だったか。
浴衣の下に隠されていた熱気が指先に触れ、外気に散っていく。
「ありがと。じゃ、競争ね兄さん。負けた方が氷オゴリで!」
「負けても泣くなよ?」
軽口を叩いてしばらく一緒に水面を睨む。
「あ、」
なんていう声にそちらを見やれば、薄黄色の金魚がアルの手元に漂っていた。アルフォンスの髪のような、穏やかな金色にも見える。
「兄さんみたい」
笑いを含むアルフォンスの言葉と共に、そのモナカが水を掻く。器に落とされた金色は、弟の手の中でくるくると舞った。
それからも見事に掬い取られていく金魚に見惚れて、いつの間にか水に突っ込んだままだったオレのモナカは、水槽の中でぐずぐずとふやけてしまっていた。
PR
この記事にコメントする
倒れないように
支えておきますね。
帰り道と真逆ですが、お会いできると幸せです(^-^)v
帰り道と真逆ですが、お会いできると幸せです(^-^)v
メールフォーム
カウンター
ブログ内検索

